SF 宇宙船リサイクル号 PART III

 私は宇宙船リサイクル号、艦長の文雄こと、フーミネーターである。
あれから、どれだけの月日が過ぎたであろうか。今、あのイスカンダル星から通信が入り、それに伴い静まり返っていた各システム系が自動的に作動し始め、そしてこの星の誘導電波に乗って、星に向けての着陸体制に入ろうとシステム系が忙しく作動している。

私もミー君と共に生命維持カプセルから目を覚まし、しばらくの間意識回復のために時間を費やしていたが、突然アナライザーのロボコンの「イスカンダルが見えます」という声に我に返り、窓越しから船外を見ると、何と美しい、地球に勝るとも劣らないイスカンダル星が大きく、さらに大きく目に飛び込んできた。ついに理想の星、幻の星イスカンダル星に私はたどり着いたのだ。

私はミー君とロボコンと3人(?)で喜びに沸き立った。そしてミー君が「フーミネーターが消えてるニャー」と言うので鏡に映してみると、確かに本来の自分に戻っていた。フーミネーター化は光速度に伴う、宇宙空間に於いての現象なのだと私は思った。−こうして私はイスカンダル星人の盛大な歓迎を受け、5年近くこの星に滞在することになったのだ。

さて、ここでこの星にまつわる話をしておこう。先ず、この星には通貨と言うものが無い。いい物は作られてはいるが、すべて共有で、皆お互いに自由に使用して良いのである。当然貧富の差などあるはずはない。それぞれが経済的に自由なのである。まさに私が求めていた究極の星であった。そして、ある時、私は王室のある女性と恋に落ち、愛の暮らしの日々を送った。その様の中で、愛らしい2人の姉妹を授かり、その名をスターシヤ、サーシヤとし、4人で幸せな生活を送っていた。
イスカンダル人は、成長がとても早く、しかも、ある一定の成長に達すると、老化は極端に遅い。2人姉妹の成長は、もう成人の域に達しようとしているが、この間私も同様に、まったく年を取っていなかったのは言うまでもない。

年月の過ぎ去るのは早いものでリサイクル号の地球に向けての再出発の日が近くなってきた。私は地球で家族4人、共に暮らすことを提案したが、3人ともイスカンダルを守る王家の身であることから、この星に残るということで、私も文化の低い地球に住まわすことは心苦しく思い、私1人で地球に向かうこととした、そして地球のノアの箱船グッズのおみやげの代わりとして、波動エンジンの理論設計図と、地球上で作り得ないエンジンパーツをもらって帰ることにした。そして、幾度も幾度も別れを惜しみ、一緒に暮らした最愛なる私の恋人と娘達と別れの一時を過ごしたのだった。

そして娘達の写真を抱き、今はもう遠く離れていくイスカンダル星を見ながら、逆に大きくなっていく様々な思い出をつのらせ、最後の別れを遂げた。
「さよなうならイスカンダルよ。さようなら愛する人よ。私はいつまでも忘れはしない。私は宇宙のどこかで最愛なる3人の幸せを願っている」と

 かくして母なる地球、そして故郷の太陽系を離れ、はるか20万光年の大宇宙の旅(21世紀経営)に出た宇宙船リサイクル号は、宇宙素子(仕入商品)をエネルギー源とし、途中他の惑星(同業者リサイクル)に立ち寄りながら、マザースター地球へと帰艦の進路を向けたのである。そして何時しか地球に戻った時、その時はたぶん、私は究極なる隠居生活をしていることであろう。

≪完≫

P.S.このリサイクル号がイスカンダル星に行ったことで、後の西暦2200年、放射能汚染の危機から地球を救う最大の手懸となったことは知る由もなかった。